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高森明勅
2024.4.30 11:26皇統問題

養子縁組で皇族になった旧宮家子孫男性の妻子は皇族か国民か

これから始まる国会協議では、残念ながら
有識者会議の提案を土台にすることになる。
しかし同提案は、単に安定的な皇位継承という
本来の課題に対して「白紙回答」というだけでなく、
目先だけの皇族数の確保策としても「空欄」が目立つ。

例えば、養子縁組で皇族になった
旧宮家子孫男性の妻子は、皇族か国民か。

先ず、養子本人は皇族になっても皇位継承資格を持たないプランだ。
又、養子縁組の時点で既に結婚していて子がいても
(こういうケースまでも許容しようとしていることに呆れるが)、
その子は「養親」との親族関係を持たず、皇族にはしないという
(「ことも考えられます」報告書12ページ)。

ここでも、皇族と国民が“一つの世帯”を営むという
無茶なケースを、当たり前のように想定している。
皇室と国民の厳格な区別という感覚が皆無だ。

それはともかく、養子の家族関係については、
僅かにこれだけしか言及がない。

養子縁組の前に結婚した「妻」を皇族とするのか
国民とするのかすら、明言しない。
更に縁組“後”に結婚した妻や、その妻との間に
生まれた子は、皇族なのか国民なのか。

制度化に当たり、検討した結果を明らかにすべきなのに、
空欄のままで一切言及がない。
妻子を“皇族”とした場合、元々皇族であられる
「養親」とは無関係に、「養子」との結婚及び親子関係
だけを根拠とするのか。

又、縁組後の子が男子なら皇位継承資格を認めるのかどうか。
もしその子に皇位継承資格を認める場合、皇位継承資格を
“持たない”親から生まれた子だけが継承資格を持つことを、
一体どのように根拠付け、正当化するのか。

天皇·皇后両陛下のお子様であられる敬宮殿下をはじめ
内親王·女王方は現に皇族であられる。
にも拘らず、ただ「女性だから」という“だけ”の理由で、
夫と子を国民とする理不尽なプランが提案されている。
それとの兼ね合いをどう整理するのか。

天皇から血縁が遥か20世以上も離れ、皇籍離脱から
既に80年近く経過し、父親や祖父の代からずっと
一般国民なのに、ただ「男性だから」という“だけ”の
理由で、養子縁組で皇族になった旧宮家子孫の妻子は
共に皇族とするのか(ちなみに内親王·女王は皆様、
天皇からの血縁は1〜3世)。

そうしたプランは、大切な天皇とのご血縁=皇統よりも
思考停止的に「男尊女卑」を優先させる暴挙と言う他ない。
それを見破られたくない為に、敢えて空欄のままにしたのか
(トリックの可能性については令和4年1月23日のブログ
「政府の『男系』養子縁組プランにはトリックが隠されている?」
で指摘した)。

それとも、元々リアリティが無いプランなので、
制度としての完結性など気にしていないのか。

【参考ブログ】
https://www.a-takamori.com/post/220124

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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